PTコピーライターの食卓

二子玉川在住、個人事業主のテーブルトーク

超スピードだけど時速は・・・

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画像:Pxhere

映画「ザ・コミットメンツ」撮影終了後、そのまま本当にデビューするプロジェクトがあったといいます。が、メンバーどうしが映画さながらの激しい喧嘩の末、結局デビューは見送られるという後日談があります。いかにも彼ららしいエピソードです。

ダブリン滞在はわずか3週間でしたが、レストランやパブ、あるいはバスや鉄道などで出くわした人々に共通していたのは、ザ・コミットメンツのメンバーのように短気で怒りっぽいところはありますが、お茶目で憎めない国民性でした。バイキングの末裔でもあり、ケルト系の文化とカトリック信仰が結びついた独自の習慣を、今も大切にしているところにも好感が持てました。

ただ、明るい面だけでもありません。長くイギリスに支配されていた時期があるためか、今でもイギリスに対する反感があるようです。例えば、食事中に子どもが「イギリスの食事はどうか」と尋ねてきました。遠い日本からやって来た僕に、そう尋ねた方がわかりやすいと配慮したのだと思われますが、母親が「アイルランドの食事と聞くべきでしょう?」とやや怒気を込めた口調で言い聞かせていました。

下調べとして読んだ「街道を行く・愛蘭土紀行」(司馬遼太郎著)でイギリスとの間の悲しい歴史を知り、独立闘争の武装組織アイルランド共和軍(IRA)の活動の経緯を把握しました。ブレグジットにおける北アイルランドとアイルランドの国境問題にも影響を及ぼしています。司馬氏はイギリスとアイルランドの関係を日本と韓国のそれに似ている、という趣旨の指摘をしています。

黒人音楽をルーツとするソウル・ミュージックを演奏する理由について、ザ・コミットメンツのマネージャーはこう説明しています。「アイルランド人はヨーロッパの黒人だからだ」と。歴史的背景から、確かにそういえるでしょう。

ダブリンから帰国する日の朝、ステイ先の父親がクルマで空港まで送ってくれました。「子どもたちが悲しむから」と裏口から荷物を抱えて家を出ます。クルマに乗り込むと途中の幹線道路は大渋滞で、普段は温和な父親がイラついていました。やはり気が短いのでしょう。そして混雑を抜け出すと、「ソレッ!」とばかりにアクセルを全開。前方の景色がビュンビュンと後ろにぶっ飛んでいきます。

「一体何キロ出してんだよ、このオッサン」と恐る恐るダッシュボードをのぞき込むと・・・スピードメーターの針は「ゼロ」を指したままブルブル震えていました。

(おわり)