フランスから続く国境のトンネルを抜けると、圧倒的にイタリアでした。昼間の照り返しがレンガ色になりました。そんな初めてのイタリアの風景を、朝の菓子パンを食べながら思い出します。
イタリアの新型コロナウイルス感染による死者が、とうとう中国を上回ったと報じられています。同国の北部は中国人の生活者が多いとか、医療崩壊が起きているとか、様々な説があります。
イタリアを訪れたことがある人なら、残念で仕方ないでしょう。以前のような日常に戻るのに、どれぐらい時間がかかるでしょうか。
降り注ぐ陽の光が水辺にキラキラ輝く光景はどこよりも印象的で、暮らしていれば陽気にならないわけがありません。しかし、楽観的な国民性が不幸を広げた可能性もあり、心を痛めます。
コートダジュールに沿ってローカル鉄道を乗り継ぎ、モナコを経てフランスのマントンに到着。乗り換えた列車はトンネルを通り抜けると、荘厳な教会がシンボルのベンティミリアという古い街。
日本人がイタリアに入国するルートはいくつもありますが、こんな行き方は珍しいでしょう。駅周辺でウィンドウショッピングしたり、ブラブラと海辺を歩いたり、地元感満載です。
そこからさらに東へ進み、目指すはチェルボという要塞都市。列車に揺られているうちに眠り込み、自分が中世の時代に生まれてきたかのように、時空をさまよいます。
いろいろな人に出会い、言葉はわからなくても意思の疎通は可能と知ります。そして、朝に甘い菓子パンを食べる習慣をそこで身に着けたのだと、今思い出しました。
菓子パン系を多く味わい、コーヒーで流し込んだホテルの朝食が忘れられず、そのまま自分の生活に溶け込んだようです。
アンテンドゥで購入した「パティシエのメロンパン」(175円)は卵とバターを豊かに使って焼き上げた大人の菓子パンといったところ。イタリアの甘さに通ずる風味を感じました。
(おわり)